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W 真空管の増幅動作の解析

1.真空管の特性

2.真空管の最大定格

3.真空管の動作点

4.真空管の3定数

5.真空管へ入力電圧を与える

6.負荷抵抗RLを挿入して出力電圧を取り出す

7.動作点とロードライン

8.最大出力電圧と電圧増幅度

9.歪率の計算

10.真空管のグリッド回路

11.真空管のバイアス回路

12.カソード抵抗と電流帰還

13.三極管の電極間静電容量

14.等価回路と周波数特性

第3章 三極管の特性とカソード接地回路

はじめに

・増幅回路の設計の基本はまず真空管の単体の入力と出力の関係を理解することである。

・次に抵抗やコンデンサーを接続した時の増幅回路の入出力関係を理解することである。

・カソード接地回路が増幅回路の基本である。

 

3.1 三極管の構造と特性

(1)三極管の構造

@三極管の模式図とシンボル表記

Aヒーター

Bカソード

Cグリッド

 グリッド電圧

Dプレート

 プレート電圧

 プレート電流

E電源

(2)三極管の特性曲線

@特性曲線

A直流動作点

B動作点の移動と交流動作

C交流動作と出力電流

・電流は変化するが電圧は変化しない。

(3)真空管の三定数

@電圧増幅率μ

A内部抵抗rp

B相互コンダクタンスgm

C三定数の関係

(4)三極管の最大定格

@最大定格プレート損失PLLim

A最大定格プレート電圧EpLIm

B最大定格プレート電流IpLim

Cヒータ−カソード間電圧EhkLim

Dヒータ電圧

Eグリッド抵抗

F安全領域の可視化

 

3.2 特性図に基づくカソード接地回路の解析

・特性図を用いると解析や設計を視覚的に行なうことが出来る。

 正弦波信号の解析を視覚的に行なえる。

 回路の直流電圧配分を回路図と対応付けしやすい。

(1)プレート抵抗を挿入する

@出力電流の変化

A出力電圧の変化

(2)直流ロードラインが意味すること

@6DJ8の動作点と直流ロードライン

 垂直のロードラインの意味

 水平のロードラインの意味

Aグリッド電圧を変えて動作点をLL上で移動させる

B出力電圧のクリップとカットオフ

(3)カソードバイアスをかける

@バイアスをかけるとは

 バイアス電圧の大小と符号

 バイアスの深浅という表現

 バイアス電圧設定の目安

Aグリッドバイアス回路

Bカソードバイアス回路

 カソードバイアス抵抗の挿入

Cカソード抵抗と電流帰還

・Rkを挿入すると回路への入力電圧eiはそのまま真空管のG−K間に伝わらない。

・Rkの分だけ減少すてしまう。

Dグリッド抵抗の挿入

 グリッドリーク電流のバイアス電圧への影響

(4)電源電圧の変更

・バイアス電圧の分だけ電源電圧を高くする。

 カソードバイアス方式の直流電圧配分

(5)カソードバイパスコンデンサーの付加

・回路の入力信号電圧はGE間に与えられる。

・このG−E間の入力信号電圧がG−K間にそのまま伝わるようにCkでRkを交流的にショートする。

・直流ではRkはEkを生成しているのでバイアス電圧は影響を受けない。

・低域ではZckが大きくなりRkをショートできなくなりゲインが低下する。

・低域の周波数特性に影響を与える。

・等価回路による周波数特性の解析で定量化する。

・本節では中域でRkがショートされた状態で説明する。

(6)次段との結合回路の付加

・増幅動作によりRpには脈流電圧が現れる。

・交流電圧のみを次段に伝えるためにCcで直流電圧をカットする。

・交流電圧はCcとRg2で分圧される。

・Rg2に現れた交流電圧が次段に伝わる。

・中域ではZcc=0と見なせるのでRpの交流電圧はそのままRg2に伝わる。

・低域ではZccが大きくなり直流では無限大になる。

・Rpの交流電圧は次段に伝わらなくなる。

・これもCkと同様に低域の周波数特性に影響を与える。

・等価回路による周波数特性の解析で定量化する。

・本節では中域でRkがショートされた状態で説明する。

 Cc容量

 Ccの耐圧

 低域カットオフ周波数と時定数

(7)交流ロードライン

@プレート負荷抵抗と交流負荷インピーダンス

A直流ロードラインと交流ロードライン

B最大出力電圧

C電圧増幅度・ゲイン

・電圧増幅率μと混同しないこと

・Aは以下のようにμ*egkをrpとZLで分圧した電圧のZL分に該当する。

 A=   ZL  *μ*egk

    rp+ZL

D最大出力電力

・電圧増幅回路では出力電力に着目することはほとんどない。

・出力回路の電力増幅で必要となるのでその準備としてここでここで説明しておく。

(8)歪率

@ロードラインから歪波形を求める

 真空管の非直線性とは

A第二高調波歪率D2の計算

 電流による計算

 電圧による計算

B第三高調波歪率D3の計算

 電流による計算

 電圧による計算

C総合歪率Dの計算

D歪の小さいZLと動作点の選択

・電圧増幅回路では大きな電圧を取扱う必要がないので直線性の良い領域のみを使用できる。

・少々Rpを小さくしてLLの傾きを大きくしても直線性は対して悪化しない。

(9)プレート損失

・RkとRTRの影響、電子回路Tの記述の理解

@無信号時のプレート損失

A最大出力時のプレート損失

・交流動作時には一般的に真空管の非線形特性のために平均プレート電流が増加するがA級動作では無視できる。

・交流動作時には電源から供給される電力は真空管だけでなく負荷抵抗でも消費される。

・従ってプレート損失は無信号時に最大である。

・直流動作点を最大定格領域の内側に設定する限り最大出力時のプレート損失は確認する必要がないことがわかる。

 

3.4 等価回路に基づくカソード接地回路の解析

はじめに

・ゲイン、位相、Zi、Zoは周波数によって変化する。

・これらの変化は特性図では解析が困難である。

・そこで真空管を等価回路で記述し回路解析の手法を適用すると周波数特性の統一的な解析が可能となる。

(1)カソード接地回路の等価回路

@真空管の等価回路

・電極間静電容量は真空管の高域の周波数特性を決める。

・特に出力管の場合は高域の固有の音を持つ要因となる。

 等価回路の目的

 電極間静電容量

Aカソード接地回路の等価回路

 周波数特性解析の範囲

・カソード接地回路の解析範囲は次段の入力以下ピーダンスまで考慮する必要がある。

 即ち、回路の負荷をRpだけでなく結合回路と次段の入力インピーダンスまで考慮して初めて有効な周波数特性を求めることが出来る。

  結合回路

  次段のZi

 特性図との関係

(2)全帯域の等価回路

@全帯域等価回路

AGとPの分離回路

(3)中域特性

・コンデンサーのインピーダンスを無視できる周波数帯域を中域として取扱う。

@中域等価回路

Aゲイン

B中域特性のまとめ

・決定要素

(4)低域特性

・低域ではZckとZccの影響が現れる。

@低域等価回路

Aゲインの計算式

B位相の計算式

C低域カットオフ周波数

・中域から低域にかけての最初の折れ点周波数である。

 ゲインが3dB低下する。

D低域第二折れ点周波数

E低域第三折れ点周波数

F低域特性のまとめ

・決定要素はCcとCkである。

 値が大きいほど折れ点周波数は直流の方向に移動する。

(5)高域特性

・高域ではCgk、Cgp、Cpkの影響が現れる。

@高域等価回路

Aゲインの計算式

B位相の計算式

C高域カットオフ周波数

・中域から高域にかけての最初の折れ点周波数である。

 ゲインが3dB低下する。

D高域第二折れ点周波数

・高域にかけてゲイン低下が止まる周波数である。

E高域特性のまとめ

・決定要素は当段の真空管のCgk、Cgp、Cpkと次段の入力インピーダンスで決まる。

・選球が重要であり設計段階での自由度はあまり無い。

(6)入力インピーダンス

@Cgpとミラー効果

(7)出力インピーダンス

 

3.5 カソード接地電圧増幅回路の設計

はじめに

・解析と設計の違い

 解析とは回路定数と回路特性の関係を明らかにすることである

 設計とは解析で明らかにした関係を用いて必要な回路特性を得るための回路定数を決定することである。

・最初の設計であるので詳細に説明する。

(1)電圧増幅回路とは

(2)カソード接地電圧増幅回路の概要

@回路図

・これまでに解析してきた回路である。

A構成

・アンプの初段に使用する回路である。

・次段はドライブ回路か位相反転回路である。

B機能

・約1V以下の入力電圧を10V〜20Vに増幅するための回路である。

・大きな最大出力電圧を必要とすることはあまりない。

C特徴

・最大出力電圧の大きさよりも電圧増幅度が重要な性能指標である。

・小さな入力電圧で必要な出力電圧を得られることが重要である。

D定性的な動作

(3)設計条件を確定する

@次段が必要とする信号電圧の大きさの確定

A負荷(次段の入力インピーダンス)の確定

(4)設計方針を確定する

@特性図で直流動作点、ロードライン、最大出力電圧、ゲイン、歪率等を設計する。

A等価回路で周波数特性、入出力インピーダンス等を設計する。

(5)特性図に基づく設計

@電圧増幅管6DJ8の特性を確認する

A最大定格領域を視覚化する

B直流動作点を設定するための特性曲線を選ぶ

C選択した特性曲線上に直流動作点を設定する

Dロードラインを試しに引いて見る

 ロードラインの傾きを選ぶ目安

 LLを水平・垂直に近付けてみる

 最大出力電圧を試算する。

 最大入力電圧を確認する

 ゲインを試算する

E負荷インピーダンスZLを決定する

・必要な最大出力電圧が得られるLLの傾きからZLを決定する。

Fプレート抵抗Rpを求める

G歪率を計算する

 第二高調波歪率

 第三高調波歪率

 総合歪率を計算する。

Hグリッドリーク抵抗を決定する

Iカソード抵抗を計算する

J電源電圧を計算する

(6)等価回路に基づく設計

@直流動作点近傍のμとrpを計算する

A結合コンデンサーを決定する

・20Hzでフラットとなるように低域カットオフ周波数を設定する。

 Ccの容量の計算

 Ccの耐圧Vckの計算

 結論

Bカソードバイパスコンデンサーを決定する

・カットオフ周波数の3分の1程度に設計する。

・ただしNFBをかける場合はスタガーリングとしてもう少し小さく設定する。

 Ckの容量の計算

 Ckの耐圧Vckの計算

 結論

C高域カットオフ周波数を計算する

D入力インピーダンスを計算する

 入力抵抗Ri

 入力容量Ci

E出力インピーダンスを計算する

(7)設計結果をまとめる

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